所得格差と教育の関連性に関する定量的研究

所得格差と教育の関連性に関する定量的研究

1. 研究背景

所得格差は社会経済の不平等を象徴する重要な指標であり、これが教育へのアクセスや教育成果に影響を及ぼすと考えられています。しかし、その具体的な影響メカニズムや規模はまだ十分に明らかになっていません。そこで本研究では、所得格差と教育の関連性を定量的に分析し、これをより深く理解することを目指します。

2. 既往研究と本研究の特徴

所得格差と教育の関連性については、既に多くの研究が行われています。例えば、大尾らの研究（1）では、所得格差が子供の教育成果に影響を及ぼすことが示されています。一方で、五十嵐（2）は、高い所得格差が教育の機会均等を阻害すると指摘しています。

しかし、これらの研究は主に相関関係を示すものであり、因果関係の解明には限界がありました。本研究では、最近の経済学の研究手法を用いて、所得格差と教育成果間の因果関係をより明確にすることを目指します。具体的には、大竹と柴崎（3）が示したような自然実験や工具変数法を用いて因果関係を推定します。

また、本研究では、各国の所得格差と教育成果の比較分析を行うことで、文脈による影響も考察します。このアプローチは、佐藤（4）や工藤（5）の報告書で示されているような、国際的な視点を取り入れるものです。

3. 研究目的

所得格差が教育成果や教育へのアクセスにどのような影響を及ぼしているかを明らかにし、その結果を用いて教育政策や貧困削減政策の改善につながる提言をすることを目指します。

4. 研究方法

本研究では、経済学の定量的手法と社会科学の理論を融合し、所得格差と教育の関連性を総合的に探求します。

4.1 文献調査と既存研究のレビュー

初めに、過去の研究をレビューし、所得格差と教育についての既存の知見と理論をまとめます。この過程で、所得格差が教育に及ぼす可能性のある影響の種類と、それを定量的に評価するための指標を識別します。

4.2 データ収集と前処理

次に、所得格差と教育成果のデータを収集します。特に、国家統計局や教育省から得られる公開データを使用します。収集したデータは前処理を行い、分析に適した形に整形します。

4.3 データ分析と結果の解釈

データ分析は、回帰分析や因果推論の手法を用いて行います。具体的には、所得格差を独立変数とし、教育成果を従属変数とした回帰モデルを構築します。その結果から、所得格差が教育成果にどの程度影響を及ぼしているかを定量的に評価します。

5. 研究計画

2023 年 10 月 - 2024 年 2 月: 文献調査と既存研究のレビュー

2024 年 3 月 - 2024 年 5 月: データ収集と前処理

2024 年 6 月 - 2024 年 9 月: データ分析と結果の解釈

2024 年 10 月 - 2025 年 1 月: 論文の執筆と提案

2025 年 2 月 - 2025 年 3 月: 論文の見直しと修正

6. 期待される結果とインパクト

本研究の結果は、所得格差が教育成果に及ぼす影響をより明確に理解することに寄与します。また、その結果は教育政策の策定や貧困削減策の改善に有用な洞察を提供し、社会経済の公平性を向上させるための道筋を示すことが期待されます。

参考文献

大尾太郎., Hendren, N., Kline, P., Saez, E., & Turner, N. (2014). Is the United States still a land of opportunity? Recent trends in intergenerational mobility. American Economic Review, 104(5), 141-147.

五十嵐太郎. (2013). Income inequality, equality of opportunity, and intergenerational mobility. Journal of Economic Perspectives, 27(3), 79-102.

大竹太郎., & 柴崎太郎. (2008). Mostly harmless econometrics: An empiricist's companion. Princeton university press.

佐藤太郎 (2018). Equity in Education: Breaking Down Barriers to Social Mobility. OECD Publishing.

工藤太郎. (2017). Reducing global poverty through universal primary and secondary education. Policy Paper 32/Fact Sheet 44.