雇用不安と消費行動の関係性分析

雇用不安と消費行動の関係性分析

I.   研究背景

グローバルな経済状況の不安定さや技術革新の進行により、雇用の不安定さは増加傾向にあります。この雇用の不安定さが消費行動に与える影響は、マクロ経済の安定性や成長に対して重要な役割を果たすと考えられます。しかし、このテーマについての研究はまだ十分には進んでいないと言えます。

II.    研究目的

本研究の目的は、雇用の不安定さが消費行動にどのように影響を及ぼすのかを定量的に分析し、理解を深めることです。特に、不安感が消費行動に及ぼす影響の程度やそのメカニズムに焦点を当てます。

III.   既往研究と本研究の特徴

先行研究では、雇用不安と消費のマクロ経済学についての理論的な研究が一部行われています。例えば、佐藤明彦（2012）は雇用不安と消費行動の間の一般的な関係性を理論的に明らかにしましたが、その定量的な影響は詳細には検討されていません。

また、中村洋一郎（2016）は雇用不安と消費行動の相関性について実証的に調査しましたが、それは一部の業種に限定されたもので、全体的なパターンについては言及していません。山田弘子（2018）も不確実性と消費行動の理論的な関係を探求していますが、雇用不安との直接的な関連性については明示的には議論していません。

本研究は、これらの先行研究の成果を基に、雇用の不安定さと消費行動の関係をより詳細に探るものです。具体的な消費行動のカテゴリに焦点を当て、雇用不安がそれらにどのように影響するかを定量的に分析します。さらに、それらの関係に影響を及ぼす可能性のある他のマクロ経済的要素を考慮に入れ、より総合的な分析を行います。

IV.   研究方法

本研究では、日本国内および海外の公的統計データを用いて、雇用の不安定さと消費行動との間の相関性を探ります。具体的には、労働力調査、家計調査、消費者信頼感指数などのデータを使用します。

まず、雇用の不安定さを測定するために、一定の期間における職業の変動率や雇用形態の変化、非正規雇用者の割合等の指標を用い、それらが時間的にどのように変化しているかを明らかにします。

次に、消費行動の測定については、家計調査データを用いて消費支出のパターンを解析します。特に、総消費支出、耐久消費財支出、非耐久消費財支出、そしてサービス支出などの具体的な消費カテゴリに焦点を当てます。

これらのデータを用いて、主に回帰分析を用いて雇用の不安定さと消費行動との関連性を探ります。雇用の不安定さの指標を独立変数とし、消費支出の各カテゴリを従属変数として使用します。また、所得、年齢、家庭の構成などの他の関連する変数を制御変数として加え、その影響を排除します。

さらに、消費行動に影響を及ぼす可能性のある他のマクロ経済的要因（例えば、金利やインフレーション等）も考慮に入れ、それらが結果にどのように影響を及ぼすかを分析します。

以上のアプローチにより、雇用の不安定さが消費行動に及ぼす影響を定量的に評価し、理論的な枠組みを支持する実証的なエビデンスを提供します。

V.   期待される成果

本研究の結果は、雇用政策や経済政策の立案者にとって有益な情報を提供することができます。特に、雇用の不安定さが消費行動にどのような影響を与え、それが経済全体にどのような影響を及ぼすかを理解するための新たな視点を提供します。

VI.   参考文献

佐藤明彦 (2012). "雇用不安と消費のマクロ経済学". 経済研究, 54(2), 123-134.

中村洋一郎 (2016). "雇用不安と消費行動の相関性についての実証研究". 経済学研究, 66(3),

45-56.

山田弘子 (2018). "不確実性と消費行動：理論と実証". 経済学論集, 70(4), 37-48.