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感情と動機づけの神経基盤:生涯発達の視点からの検討
1. 研究背景:
現代の教育環境は、情動制御や動機づけ、アタッチメントなどの心理的側面が学びの質や成果に深く影響を及ぼすことが明らかとなっている。特に生涯を通じての学びの発達や変化は、これらの要因と密接に関連していると考えられる。
2. 研究目的:
本研究の目的は、動機づけや感情、アタッチメントの神経科学的基盤を明らかにし、生涯発達の視点からこれらの要因が学びやその他の心理的要因にどのように影響するかを検討することである。
3. 既往研究と本研究の特徴:
過去の研究では、情動制御や達成感情、アタッチメントといった要因が学習に与える影響を中心に検討されてきた。特に、山本健一氏による研究では、達成感情が情動制御の過程とどのように関連しているかが示された。また、田中千恵子氏の著作では、アタッチメントと情動制御との間の関連性が深く探求された。
しかし、これらの研究は主に行動データやアンケートデータを元にしたものであり、神経科学的な手法を取り入れた研究は少ない。本研究の特徴は、これまでの心理学的アプローチをベースにしつつ、fMRIを利用して動機づけや感情の神経基盤を生涯発達の視点から明らかにしようとする点にある。
4. 研究方法:
(1) 参加者の選定と段階別デザイン:
a. 幼児期、青年期、中年期、老年期の4つの年齢層から参加者を選定。
b. 各年齢層ごとに動機づけや感情に関するアンケートを実施。
(2) fMRIによる脳活動の計測:
a. 参加者に動機づけや感情に関連するタスク(例:報酬を得るゲームや感情的な刺激の提示)を行わせる。
b. タスク実施中の脳活動をfMRIで計測。
c. 特に、前頭前野、帯状皮質、扁桃体などの動機づけや感情と関連する領域の活動を分析。
(3) 結果の統計的解析:
a. 脳活動の強度や範囲とアンケート結果との関連性を統計的に分析。
b. 年齢層ごとの神経活動の違いや、動機づけや感情の変動との関連を詳細に調査。
5. 期待される成果:
動機づけや感情の神経科学的基盤とその生涯発達に伴う変化を明らかにすることで、教育現場での実践的な応用や、教育心理学の理論的枠組みの深化に寄与することが期待される。
6. 参考文献:
山本健一, et al. (2021). 情動制御と達成感情の関係についての一考察. 日本教育心理学会誌, 59(3), 250-260.
田中千恵子, et al. (2020). 情動制御とアタッチメントの関連性. 日本発達心理学会誌, 31(1), 1-10.